それはちょっとのお別れ







お化け退治を無事終え、アルカパの宿に戻ったたちは、ベットに倒れこみ
死んだように眠った。しかし、3人の顔には達成感がにじみ出ていた。

――翌朝

パパスに起きるように諭され、のっそり起き上がった。目に隈は必至だ。
はパパスがいくら起こしても起きないので、仕方なくをおいて朝食をとるべく
宿泊室を後にしたパパスと
パパスとがでていった数分後、ガバリと起き上がった


「・・・猫!」


いそいそと着替え(今日は黒と白がベース)、形見の羽根帽子を被り
窓枠に手をかけ、勢いよく飛び降りる。

―――が


「ぎゃー!!痛ぁぁああああ!!!!」


生い茂る木々に思いっきり突っ込んで、そのまま枝やら葉やらに傷つけられながら
地面に落っこちた。思いっきりしりもちをつき、声にならない悲鳴を上げる。
し、しまった、泊まってた部屋の外は木しかなかったんだっけ・・・飛び降りる前に気づけよ自分。
なんて、自分を責める。が、すぐに立ち直り、痛む擦り傷をしげしげと見つめる。


「痛々しいわ・・・ホイミ!」


立ち上がり、ホイミを唱える。
お尻がひりひりと痛み出す、は顔を顰めながらも宿の壁に沿って歩き出した。


(お尻の痛みは、ホイミじゃどうしようもないようね・・・)




少し歩くと、子供らしき泣き声が聞こえてくる。
は何も考えずに、ただ音源に向かって走った。正義感の強さ、此処でも発揮。


「だいじょ・・・あれ?モンスター・・・」


音源はなんと、モンスターだったのだ。
クリアなブルーにつぶらな瞳のこれはまさしく、


「ぼく、スライム!」


スライムだった。


「・・・そんなのみりゃわかるわよ。モンスターがどうかしたわけ?」


毒舌がスライムを凝視しながら言う。
スライムは声の調子を変えることなく説明を始める。


「ぼく、悪いスライムじゃないんだヨ!
 でも・・・道に迷っちゃって・・・怪我しちゃったの!お姉ちゃん助けて?」


うるうると瞳を揺らし訴えるスライム。
そこで初めてスライムの魅力に気づいた。スライム・・・可愛い!
ほんわか〜という表現が似合う顔をして、スライムに優しい眼差しを向ける


「待っててねスライム、あたしがホイミするから!」


目がハートになりそうな勢いのが、丹精込めてホイミをスライムにした。
スライムは嬉しそうに飛びはね、ありがとー!と叫んだ。お前可愛すぎだよ・・・!


「スライム、よかったらあたしと一緒にこない?」

「えっ?いいの??」

「勿論よ!あたしは、宜しくね」

「ぼくはスライムだヨ!宜しくね、ちゃん!!」












「いたいた!〜探したわよ?」
「あれ、ビアンカ姉さん・・・どうしたの?」
「どうしたのって、あの猫ちゃんをイジメっ子から取り返すんじゃない!・・・ってそのスライムは!?」


気づくの遅いよ姉さん、と心の中でツッコミつつ、スライムの紹介をした。
も興味あり気にスライムを見ていた、が何かに興味を持つなんて
今日はモンスターの大襲撃でも起こるのかしら?は真面目にそんなことを考えていた。





「おいそこの少年AB!お化け退治はしてきたぞ!とっとと猫おいてどっかいけ!!」


今日も変わらず猫虐めに1日を費やしている少年ABを、がビシィッと指差し
命令する。少年ABは顔を引き攣らせ、もうしませえええええん!!!と泣き叫びながら
家へ駆け込んだ。まぁ、結果オーライだろう。


「この猫に名前を付けてあげましょう?」


ビアンカが猫もどきをなでながら、双子に尋ねる。
すると双子は声を揃えて「ネーミングセンスないか任せる」といった。


「じゃあ・・・チロルにしましょう!」






宿の扉の前にはパパスとビアンカ夫妻がいた。
パパスの顔を見た瞬間空腹を覚えたは、地鳴りのような空腹音を鳴らした。
それに気づいたパパスは苦笑しながらパンを差し出した。


「ダンカン夫人が作ってくれたものだ、お礼を言っておきなさい」
「ありがとうございます!グッドタイミーングってやつです」
「ダンカン、世話になったな!そろそろいくことにする。」


そういうとパパスは笑顔を浮かべて、歩き出した。
もその後に続く。胸を締め付けるような寂しを胸に。



「・・・ッ待って!」


後ろからビアンカの声が聞こえる。弾かれたように振りかえると、ダッシュで追いついたビアンカがいた。
しかしビアンカは、片方の髪を結んでいなかった。


「暫くあえないかもしれないから、これあげる・・・。あ、チロルちゃんにつけてあげるね」


チロルは嫌がるそぶりを見せず――寧ろ嬉しそうに、ただじっとつけおわるのをまった。
もその様子をじっと見つめる。


、またいつか一緒に冒険しましょう!ぜったいよ?元気でね・・・!」


そういうとビアンカはクルリと踵を返し駆け去っていった。
心なしか、声が震えて聞こえた。
もクルリと方向転換して、歩き出した。
なんだか1つ、大人になったような気がした。