それは新たな出会い







お化け屋敷を終え、ビアンカと別れ、3日が経とうとしている。
どっか冒険行こうぜとパパスに言っても、仕事が溜まっている。という理由で跳ね返された。


「あーつまんない、つまんないつまんないつまんない!」
「・・・」


、チロルとスライムは川辺で暇をつぶしていた。
はボーッと何かを見つめていて、は水切りをしている。
スライムはの動作を嬉しそうに見ていて、チロルは欠伸をかみ殺している。


「・・・?それ・・・なに?」


が見つめていた何か・・・それは黄金のオーブのようなものだった。
がそれに気づくと、何か恐ろしいものでも見るような顔で尋ねる。
はゆっくり顔を上げ、にだらだら説明を始める。


「これは、僕らがレヌール城に行ったとき、お化け退治を終えた後お墓に寄っただろう?
 そのとき、貰ったんだよ。そのときは、物凄く眠そうだったから覚えてないんだろうね」


うっ、と言葉に詰まる。確かに、親分ゴーストを退治した後の記憶はあやふやだ。
ぶっちゃけ、無事に宿に戻ってきたことを自分ですごいと思う。
でも、自分が今にも寝そうなときにそんなことがあったんだ・・・。


「それ、なんだかわかんないけど大切にしないとね」


いつもなら、さあ売るよ。とか言い出し、本当に売るだが、今回は違うようだ。
も何故だか知らないが、大切にしよう。と思った。


「あれ?なんか教会前に見知らぬおにーさんとおねーさんがいる・・・」


がまた水切りを始めたと思ったら、教会前にいる紫のターバンを巻いた青年と
ピエロのような派手な服を着た女性をじっとみつめていた。
は興味感心なさげに、へぇ〜とだけ呟いた。するとの張り手。


「何よ、その興味関心の無い声は!そんなんじゃこの世の中生きていけないわよ!?」


どういう世の中なんだよ、は小さく、本当に小さく呟くが、それがには聞こえたらしく
なんかいった?と低い声で言われた。はなんでもない・・・としかいえなかった。


「あのおにーさんに話しかけてみましょう?なんか、と・・・あたしに似てるし」


いわれてみれば・・・。はその言葉からその青年たちに興味を示し始めた。
気づいたらとスライムとチロルは橋を渡っていて、もその後にゆっくりついていった。


「あのーおにーさんとおねーさんさ、誰?」


が直球勝負に出た。は後ろで青年たちをじっと観察していた。
見れば見るほど、自分たちに似ている。と感じる。この人たちがもっと幼かったら
ドッペルゲンガーということになるのだろうか・・・考えると少し怖くなった。


「あっあたしだ・・・!」
「昔からこうだったよね・・・君」


意味不明な会話が繰り広げられている。ついていけないは、ただ無言。
青年の方が苦笑して、女性はその青年を小突く。
小突きにしては、青年が物凄い苦しそうだが・・・。
チロルとスライムはなぜだか2人を見て嬉しそうにしている。


「・・・そのオーブ、綺麗だね?ちょっとおねーさんたちにみせてくれないかなぁ?」
「おねーさん、あたしに似てるからみていいよ。」


は妹の単純さに肩を落とす、チラッと青年に目を向けると、目が合う。
瞳は、光を受け付けないような漆黒。肌は雪を思わせる白。
一方女性の方の瞳はダークレッドで、”怖い”という印象を受けるが、よく見れば
生き生きと輝いている。青年の瞳とは正反対だった。


「ふーん・・・ありがとう、ほんとに綺麗ね!」
「お父さんは大切にするんだよ、今のうちだけなんだから・・親孝行できるのは」
「あたしたちは、親孝行も出来なかった親不幸者だからさ!」


青年は少しだけ微笑み、の頭を優しくなでる。
女性の方はおどけていっているようだが、瞳は心なしか先ほどより哀しみを帯びている。
はコクリと頷き、それではといってその場を去った。








「ねえ、。酒場に行ってみない?」
「なんでさ」
「なんとなく」


結局酒場に行くことになった。
さあ、いくわよ。ととスライムが先頭をきる。その後ろを、とチロルが追いかける。



「わ、酒場って初めてくるわ・・・」


は酒場の内装を嬉しそうに眺める。はそれほど興味なさ気に眺め
やがてカウンターに目が留まる。
・・・え?


「ねえ・・あれ」
「何よ

「あれ・・・半透明の何かがいるんだけど」
「んなわけないじゃない・・お化けなら前に退治したじゃな・・ってマジだ!」


目を見開き、その”半透明の何か”を凝視する
すると、”半透明な何か”はこちらを見る。あっちも驚いたように口を開ける。


「あなたたち・・・私が見えるの!?」
「やっぱり幽霊なんですか・・・そうですか・・・」


が虚ろな目で視線を漂わせる。
今のに何を言っても無駄なので、とりあえずが話を聞くことにする。


「どうしたんですか?」