それは未報告





「さぁ〜宿屋は何処かしら?」


鼻歌でも歌いそうな勢いで、宿屋を探す
だが、多分に宿屋は日が暮れるまで見つからないだろう。何故なら彼女は―――――


「あら、此処は何処かしら?」
〜此処はさっきもきたって!」


防具屋を目の前に足を止めるに、スライムが痛恨のツッコミ。
そう、忘れちゃならない。彼女は極度の方向音痴だ。


「ガウガウ!」
「え?ちょっと寄って行かないって・・?んもー仕方ないなぁ、でもまっあたしも疲れたし
 茶の一杯でも出してもらおうじゃないの!」


様、異世界でも女王様ぶり発揮。










「失礼します。」


先ほどの発言とは裏腹に、礼儀正しいのギャップに困っている
モンスターたちはを凝視して固まる。


「此処って・・・よろず屋かしら?」
「そうさ!どうだい、このブーメラン!この曲がり具合がなんとも・・・「いらんわ」


商人を軽くあしらい、商品を見て回る。
スライムとチロルもそれについていき、主人の奇行を見守っている。
やがては立ち止まり、おぉ!と歓声を上げる。それに続いて何故か商人も歓声を上げる。
がその商品を手にとって、目を輝かせている。


「この石のキバ、スライムとチロルに買ったげる!」


なんて優しいご主人様!と、二匹は思ったという。


――自分の武器より先にぼくたちのを選んでくれるなんて!

――ガウガウ!


と、モンスターたちは解釈しているが、単には武闘家タイプなので
武器がいらないだけだった。それを知らないモンスターたちは、ひたすら幸せそうだった。
は支払いを済ませると、とっとと出て行った。


やっと宿屋に戻った時は既にがいた。因みに達は何時間も歩き回ったのだった。
はのんびりゆったりとした時間を過ごしていたようだ。


・・・あんたもう終わったの?」
「もうって・・・終わってから結構経ったけど・・・まあ、いいけど。あのさ、「それより聞いてよ〜」


が、この国を救うことを約束してしまったということを告げようとすると
の話を遮って自分の話をし始めた。因みにスライムは、宿屋の前にいるスライムと
雑談しているようだ。


「よろず屋でね〜いい石のキバがあってさぁー思わず買っちゃったわよ!」
「へえ、そう。それでさ・・・あの「つうか骸骨がお風呂はいってる!ウケない!?」
「そうだね、あのさ「の分も武器買っとけばよかったかしら?」


こんな感じでの話は綺麗に遮られてしまい、結局この日に伝えることは出来なかった。
どれだけネタのある人生送ってるんだ・・・。とのマシンガントークを聞きながらは思った。









むくり、起き上がり目を擦る。ああ、朝日がまぶしい。
なんて呟くではなく。朝日に照らされても熟睡し続けているにチラリ見る。
何の夢を見てるのか・・・幸せそうな顔をしてよだれをたらしている。


・・・何・・・あたしのおやつ横取りしてんのよ!!」


夢の中の自分は以外にも怖いもの知らずだったことに小さくため息をつき、を起こすことにした。
――――多分、起きないと思うけど・・・。朝日に照らされながらゆっくりとのベットに赴いた。
の手が布団に触れた瞬間、が目を見開きベットから飛びのいた。思わず身構え、
ぎゅっと目を瞑る。しかし、予想していた衝撃はいつまでたってもこない。
片目を開けると、がベットに背を預けながら荒々しい息遣いで天を仰いでいた。


「び、びっくりしたわ・・・が裸で、しかも笑顔で阿波踊りを踊ってたの・・・怖かったわ・・・」


真剣な顔、それも涙目でガクガク震えながら膝を抱く。確かに怖い。
はため息をつき、に手を差し出す。は素直に手を受け入れると立ち上がり
ゆっくりとため息をついた。とても疲れているようだ


「あぁ・・・お腹がすいた。、今から10分以内に朝食。」


が目を擦りながら命令する。朝でも食欲は滞在中のようだ。
は朝から何度目か知れないため息をつき、朝食を作ってもらうよう頼みに宿主の所へ歩き出した。














「あーうまかったわ。」


見事に朝食を完食したは、満足げに微笑み、朝食を称えた。
の半分しか食べずには小さくゴチソウサマを呟くと、昨日の事を告げようとの顔を見る。
―――が、は既にその場にいなかった。


「・・・・?」


首を傾げあたりを見回す。が、はいない。深まる謎。
朝食の更に視線を戻したそのとき


「あ、ベラだ!どうしたの??」


の声が遠くから聞こえてくる。しかも、ベラという単語が聞こえたような・・・。
このままじゃ会話の辻褄が合わなくなると思ったが、急いで席を立ち上がり
とベラの元へかけた。男なら、潔く殴られよう。