それは突然







・・・」


がなんともいえない顔でを見る。ベラは隣でにっこり微笑んでいる。
何を言ったんだベラ?は生まれて数えるほどしか感じたことのない”焦り”を感じた。
ごくりと固唾を飲むと、が迫ってきた。殴られる。そう直感で感じ取り、反射的に目を瞑る。
だが、想定していた痛みはやってこない。ゆっくりと瞳を開けると、が幸せそうな顔でいた。


ーアンタ偉いじゃない!この世界を救う約束したんだって?」
「・・・・まあ」
「また、冒険ね!ひゃっほ〜!!」


が阿波踊りを踊っていた。
一日に阿波踊りという単語が二度脳を過ぎったのは今日が初めてだ。
がどうでもいい事を思いながら、出発を呼びかける。


「出発ね!あたしが救ってみせる!!」















「とはいったけど・・・まず何すればいいのよ?」


宿屋から出て、が外で待機していたチロルとスライムと戯れていると
が気難しい顔で遠くを見つめながら呟く。
自分への質問じゃない。と思いそのまま戯れを続けていると、突然後ろから頬をつねられた。


「アンタに聞いてるのよ!アンタに!!さっさと答えなさいよ!!!」


そうはいってもつねられたままじゃ答えようにも答えられない。
は振り返らずに、自分の頬をつねっているの手をトントン叩く。
は何を思ったか、更につねる強さをアップした。痛すぎる。


「てふぉどかひてくらはい・・・」


自分で言ってて何言ってるかわからん。
は眉を寄せ、強引にの手を引き剥がそうとしたが、力が強すぎてとれない。
寧ろ、とろうとすると意地でも取らせない!とでもいわんばかり力を強めるため
先ほどよりももっと痛くなっている。


「何?早く言いなさいよ!」
ー!、ほっぺつねられてるからうまく話せないんじゃないの?」


ナイススライム。表情こそ変えないが、は心の中でスライムを褒め称えた。
それにしても、ナイススライムってなんかモンスターでいそうだな・・・。
はまたまた場違いなことを考えていた。ベラが遠巻きに見て苦笑している。
の手がからあっさりとはなされた。残るのはひりひりした痛みのみ。
が頬を擦ると、鬼ことは「さっさといいなさい」と催促する。


「春風のリコーダーっていうのをとってくるらしい。」
「フルートよ!」


真顔で答えるにベラが思わずつっこむ。実はもボケ体質なのか・・・?
が他人事のように笑って「馬鹿ね」とか罵っている。
リコーダーもフルートもどっちも似たようなもの・・・と心の中で思ったが、言葉には出さない。


「さあ、じゃあ行きましょうか。その夏風のフルートとりに」
「春風よ!」


今度はがボケた。ベラがまたまたつっこむ。二人とも天然でボケてるからまた性質が悪い。
は気にすることもなく、ずかずかと歩き出した。チロルとスライムはそれに続き、とベラが残された。
―――一体は、何処に行く気だろうか。
春風のフルートのある場所を知っているわけがない。ベラがじっとの後姿を見ているとが急に
立ち止まる。そのまま固まったと思うと、次の瞬間には方向転換をしてこちらに猛ダッシュしてきた。


「あたしフルートの場所知らないんだって!」


の目の前で急停止したと思ったら、はグーで殴った。
の頭には「なんで」の三文字が過ぎったとか。


「・・・あたしが案内するわ」


ベラが苦笑しながら歩き出した。