それは氷の世界








「さむっ!」


の叫びが虚しく木霊する。その叫びに呼応するようにがくしゃみをする。
辺りを見回しても、一面氷。スライムは大丈夫なのか?くっついて離れないとか・・・。
が変なことで怯えているうちにも、スイスイ滑っていく仲間たち。そして落ちていく仲間たち・・・。


「落ちるしか道はないのね・・・」


落ちたときの衝撃を思い、ぶるっと身震いをする。一歩踏み出したその時、


「うわっ!?」


一歩足を踏み入れただけでとまらなくなくなった。穴に一直線。










ドテッ


「いったー!」
「・・・どいて」
「すまん」


落ちたらがいた。しかしはさも気にしてないような口調で謝罪を述べた。
傍では矢張り、ベラが苦笑していた。
から退くと、ベラが何か思い出したようにあっ。と呟く。


「あ、そういえば。」
「どうしたの?」
「ドワーフのおじさんがいってたわよね、”ザイル”が春風のフルートを盗んで氷の館へいったって」
「え?そんなこといったかしら??」


が首を傾げる。どうやらはドワーフの話に全く耳を傾けてなかったようだ。
そういえば、とベラがドワーフと話していたとき、はチロルやスライムと遊んでいた気がする。
ベラは苦笑すると、話を続けた。


「そのザイルって子、何があったか知らないけど・・・早く元に戻って欲しいね」


ベラが優しい微笑みを浮かべた。ああ、ベラって何て優しい子なの。
が心中で合掌していると、が足を滑らせて滑り始めた。ああ、ってなんてドジなの。
達はを追った。









「やっと抜け出せた・・・」


が酷く疲れたように呟く。何しろ氷の館の最上階にいくまでに何時間も何時間もかかったのだから。
その間モンスターに襲われ続け、そのたび足場が滑り不利なのでどんな雑魚でも倒すのに苦労した。
そしてやってきた最上階。久々の外気に当たって気持ち良い。


「さあ、スイスイ滑って春風のフルート奪還しましょう!」


拳を振りかざし、疲れきってる仲間たちに元気を与えるように、は声高らかに言った。


それから滑りに滑って、やっと宝箱の元へたどり着いた。
―――が、そこにはザイルがいた。どうにか説得しなきゃ・・・。意気込んだが顔を上げて
ザイルと向かい合う。ザイルは微動だにせず、ただただを見ている。


「フルート、カエセ」


何故か片言で、手をさし伸ばしたまま言う。とザイル、二人の間に冷たい風が吹き抜ける。
―――風が冷たいのは冬だからなのよ。・・・早く春に戻しましょうよ
目でザイルに訴えるも、ザイルは聞く耳持たず・・・ではなく聞く目持たず状態だった。


「フルートが欲しければ力ずくで奪ってみろ!」
「上等よ!」


戦闘突入。全く、血の気の多い妹だな・・・。はふぅと息をつき、戦闘に加わった。