流れ着くは名も無き修道院








ココは・・・・何処・・・・?
目を開けると、どこか見知らぬ部屋にいた。そして、心配そうに覗きこむ空色。


「気づかれましたか?」


覗き込んでいたのは空色ではなく空色の髪をした女性だった。
清楚な雰囲気を纏っていて、育ちが違った感じだった。
シスターのような服を着ていて、深海のような色の瞳は、心配げにを見つめている。


「あー・・・はい。」
「よかったわ!あなた、樽に入っていたのよ?どうかされたのですか・・・?
 あ、言いにくいのならいいのですわ!わたくしの名前はフローラです。」


彼女の声を例えるなら小鳥の囀り、うーん。我ながらいい例え。
なんてが自画自賛していると、フローラがいきさつを尋ねてくる。
別に、聞かれちゃ駄目なことではない。彼女は命の恩人だ、それくらい話してもいいだろう。


「ちょっと奴隷やってまして。反抗してたら島流しにあいました。」


物凄い完結に、淡々と言うと、フローラが口許をおさえて「まあ!」と悲しそうに叫ぶ。
彼女の反応は、失礼だが見ていて楽しい。常に新鮮で、思わず笑顔になってしまった。


「大変でしたわね・・・ところで、わたくし貴女とどこかであったような気がするのですが?」


ちっちゃいころ、貴女と似た人とお話をしたことがあります。と、どこか昔を思い出すように
指を組み、目を瞑る。はベッドから上体を起こすと、うーんと首を傾ける。
言われてみれば、そんな気もする。


「あたしの名前はです。」
・・・・・・・・あっ、わかりましたわ!確か、お船でお会いになりましたわ・・・。
 人見知りが激しいわたくしが、唯一人見知りせずにお話できた人ですの。」


嬉しそうに語るフローラ。――――ああ、あの船の持ち主の娘さんか!はああ!と思わず叫んだ。
それにしても、こんなに話している子が人見知りが激しいとは以外だった。


「ところで、ココは何処なんでしょうか?」
「敬語なんていいですわ。ここは、名も無き修道院です。わたくしは花嫁修業に来ているんですの」
「花嫁!?フローラ結婚するの!?」
「・・・お父様が結婚させたいみたいで」


そっか。と呟く。さすが、良家の娘。
結婚といえば、ヘンリーはどうしただろうか。も・・・


「これからどうしようかしら・・・。」
「行く宛が無いのなら、ココにいてはどうでしょう?」


フローラがの手を握る。行く宛はないが、母を捜すという父さんからの受け継いだ使命がある。
だが――――お金も服も無い。生憎装備は子供のときのままで、装備しても意味は無かった。
そんなことはいいのだが、一人で探しては、今も奴隷をしているとヘンリーに不公平ではないか。
そう思った。


「あれ!?この服・・・」
「とてもお汚れになられていたんで、勝手ながらここのシスターの服に変えさせていただきましたわ。
 とってもお似合いですわ!それと、袋の中にあったお洋服も小さかったので、他のシスターが
 今ののサイズに合わせて、作ってますわ。」


にこっと微笑み、手を離す。は「わかった。」と言いながら自分の服をまじまじと見た。
――――なかなか似合ってるじゃない!
監視も恐れる様が、シスターの服とは――。多分、監視が見たら恐ろしくて泣くだろう。



「じゃあ・・・暫くココにお世話になります。あと、ココで一番エライ人のところに連れてってくれる?」
「いいですわよ。こっちです。」
「フローラにも聞いてほしいことがあるの。」












「私は、つい先日まで奴隷をやっていました。しかし、反発ばかりしていたら島流しにあい
 ここにやってきたのです。私は幼い頃母を亡くし、幼い頃から父と旅をしていました。」

「そして、父をも10年ほど前亡くしました。ゲマというモンスターの手によって・・・
 その父の最期の言葉が”母は生きている”という言葉でした。」

「父はその母を捜すために旅をしていたらしく、私と、双子の兄は、母は生きているということ
 だけを希望に奴隷生活を送っていました。」


ゆっくり、ゆっくり語るに、フローラも院長も真剣で真っ直ぐな眼差しを向けた。


「私は母を捜すために、一人だけでも旅に出ようと最初は思っていました。
 しかし何の手がかりもありません。なので、このまま旅に出ても意味はないと思いました。
 なので、何らかの手がかりがつかめるまで・・・ここにおいて貰ってもいいでしょうか?」


院長を、迷いの無い目で見る。すると院長は微笑み、「ええ」と肯定の返事を出した。
は笑顔になり、ありがとうございました!と頭を下げた。多少動機は変えたが、まあいいだろう。


「じゃあ、宜しくね。フローラ。」


握手を求めると、フローラは本当に嬉しそうにはいっ!と返事をした。
シスターなんて柄じゃないけど、頑張りますかっ!