いざオラクルベリー、いざカジノ









「では院長、お世話になりました。」


手がかりは無いが、とりあえず色々な所を回って情報を収集しよう。というの提案で
修道院を後にし、旅に出ることになった三人。昨夜の事はまだには告げてない。
は服が無いため、(というか小さい)シスターの服のまま旅立つことになった。
ヘンリーに至っては、奴隷の服のままだが。


「あなたたちの旅に、神の加護があらんことを・・・」


見送りに出てきてくれたシスター全員が神に祈りを捧げ、目を閉じた。
三人はお辞儀をすると、修道院を後にした。



目指すはオラクルベリー。




「オラクルベリーといったら、アレよねアレ!」


にしし、と笑いながら頭の後ろで腕を組むと、とヘンリーが不思議そうに見つめる。
するとは、嫌らしい笑みを浮かべて


「カジノよカジノ、ほら〜あたしって?運はいいじゃない?悪運も??」


知らないよ、とがいおうとしたところをヘンリーが口を押さえて必死に止める。
を怒らせてはいけない。というのはヘンリーも学習済みだ。
尤も身にしみているはずのは、自分に正直なため、どうしても言ってしまうのだった。


「だからオラクルベリーいったら、カジノやってくる。」
「俺もいく」
「いいけど、すっても知らないわよ?」


ついてもいないのに、カジノに行く気満々の二人にヘンリーが横槍を入れる。


「アイムノーマネー・・・」


ボソッとつぶやくが、地獄耳のはそれを一字一句聞き逃さずに聞いてしまい
ヘンリーを羽交い絞めした。


「だ・ま・れ!!いいじゃないノーマネーでも!あたしがカジノで大もうけしたるわ!!」
「いや・・・だけどさあ、金がなきゃカジノも出来ないというか・・・」
「あっ、そうね。」


パッとヘンリーを離し、キョロキョロと辺りを見回す。ヘンリーの顔は青ざめていて、
深呼吸を繰り返していた。は、毎度見事な手さばきだな。とか、感心していた。


――――モンスター発見。スライムだ。三匹いる。


「此処であったが百年目!!!貴様の命頂戴いたす!!!」


一体、何処の時代の何処の人なんだ・・・?実兄が、妹の台詞を聞いてそんなことを思う。
はスライムに奇妙な笑い声を上げながら殴りかかろうとすると、スライムたちは怯え、寄り添う。


「・・・・」
「・・・・」
「やめたやめた、可哀想だもん。」


踵を返し、とヘンリーのもとへ帰っていく。ヘンリーは「さすが!優しいな!!」とかいっているが
双子であるだけはわかっていた。がスライムを倒すのをやめた理由を。大体想像がついてしまう。
きっと、スライムはたいしたお金にならない。とでも思ったのだろう。


「それにしてもヘンリー、あんた祖国には帰りたくないわけ?」
「ん?まあな・・・俺が帰っても・・なぁ。デールが王をやってると思うしよ」
「・・・別に、いいんじゃないか?ヘンリーはラインハットの次期王の存在だったんだから」
「そんなもんか?」
「そんなもんでしょ」


にしし、と笑ってが頭の後ろで手を組む。も同じ意見らしく、滅多に見せない微笑みを浮かべ
小さく頷いた。矢張り双子なのだな、と改めて実感する。
ヘンリーは「ありがとう」と小さく呟くと、蒼空を見上げた。


「は〜、早くオラクルベリーつかないかねぇ。」


春の風が草花の匂いを運び、その匂いと共に髪が揺れる。


「疲れた。」
「疲れたの?俺が荷物持つ?」
「疲れてないわよ!!」

((どっちやねん))


この言葉にはまで心の中で突っ込んでしまった。
負けず嫌いのは、まさに子供顔負けの意地っ張りだった。








「やっとついたね」


結局に荷物を持ってもらったが、夕暮れ時にやっとついたオラクルベリーの街で
声を弾ませてヘンリーとに話し掛けた。


「そうだね、金もたまったことだし、此処はパーッと全額カジノに使うのもいいね」
「賛成!たまにはいいこというじゃない!!!」


あっはっはっは!と笑っての背中をバンバン叩くと、は苦しそうに呻く。
オラクルベリーは賑やかで、街のど真ん中にどーんとあるカジノを出てくる人の顔は
とても対照的だった。笑い声と泣き声が同時に聞こえてきそうだ。


「さて、どうしましょう?とりあえず宿とりにいこっか?」


少しオラクルベリーを歩いて、が二人に尋ねる。


「そうだね、えーと・・・宿は・・・」
「宿はコッチだよそこの双子!!正反対だってそっち!!!」


目の前に宿があるのに、宿を探しに正反対を彷徨い始めた兄妹に、ヘンリーが慌てて止めに入る。
方向音痴はこれだから大変だ。最早方向音痴の次元を超えているかもしれないが。