それは冒険




「あら?サンチョ、父さんは?」
「パパス様なら出かけております。ささ、お嬢様に坊ちゃん、どうぞご朝食を」
「何処ほっつき歩いてるのよ・・・もぅ、まあいいわ。いただきます」


何もいわずに1人何処かへ行ったことには腹を立てたが、目の前にある朝食に
そそられ、怒りは何処かへと置き去りにして、朝食を食べることにした。


――余談だが、双子は朝に弱い。


も昼間よりテンションは格段下だし、なんて一言も発しない。
つまり、低血圧なのだ。サンチョもそのことを知っているのだろう、あまり無駄口は叩いていない。


程なくして双子は朝食を食べ終えると、は外へ、はまたベットへといった。




「ビアンカ姉さん?」
「あら、じゃない!きてくれたの??」


が訪れた場所は、現在ビアンカが宿泊中の宿だった。
がひょっこり顔を出すとビアンカは嬉しそうに顔を綻ばせた。


「当たり前じゃない、ところでビアンカ姉さん、何か探してるようだけどどうしたの?」
「あ、あのね、あたしの髪を結ぶやつがないのよ」


そういえば、ビアンカはみつあみを1つにしている。
髪を結ぶヤツというのは、昨日付けていた銀のゴムのことだろう。
そういえば、昨日アレを飛ばして遊んでたっけ。なんて1人で回想してると、ビアンカが
何か知っているの?と聞いてきたので、頷いて見せた。


「それならウチにあるわ。今とってくるからまってて!」
「ありがとう!大好き!」


先ほどが顔を出した時と同様の笑顔でお礼をいうビアンカに少し照れる

―やっぱり人助けはいいわ・・・。

と改めて思ったのだった。




「あら、じゃない?」
「あ、。いいところに」


が家を出て、何処かへ向かおうとしている所をが呼び止める。
するとは悪戯っぽい笑みを浮かべてちょいちょいと手招きする。
招かれるままにの元へ行くと、あれをみて。といって洞窟の方を指差す。


「・・・父さん?」
「そう、父さんは僕らに黙って何処かへ行くらしい。」
「・・・なんとなく読めたわ」
「のるかい?
「あったりまえじゃない!!でも、ビアンカ姉さんに銀のゴムを届けるしかないから
 遅れていくわ。先いってて」
「わかった、あとで」


はそのまま家に直行し、素早く昨日跳ね飛ばして遊んでいたゴムを手に取り
マッハ速度で宿屋へと向かった。



「姐さん!!」
「あら、早かったわね。急ぎすぎて、漢字間違えてるわよ」
「これだよね!」
「そうそう、有難う!」
「いえいえ!それではー」
「ばいばい〜」


の会話速度もいつもより速いのに比べ、ビアンカの会話速度はマイペース。
ビアンカの母は、この子は、ちゃんが急いでること分からないのかねぇ、と苦笑していた。




はもういったわよね・・・」

奥に行けば行くほど暗くなっているその洞窟を見て、ポツリ呟く。
どこまで続くかわからないその一本道に、ややげんなりしながら、洞窟の無限の闇の
中へと入っていった。


「暗いのって・・・キライなのよね」


誰も一緒じゃないのに、何やら喋っているは相当のおしゃべりなのか。
そんなに、いつしかが"独り言いってるとハゲる"とささやかな警告をしていた気がする。
そんなことを考えながら、闇へと進んでいった。