それは探険




「うぅ・・・こんなことなら、まっててもらうんだった・・・」


良心的で優しい理想のお兄ちゃんなら、普通妹がくるまで待つわよね。
なんて勝手なことをいいながら、洞窟をとぼとぼ進んでいく。
足元が暗くよく見えないため、豪快にズカズカと進むわけには行かない。


―――――すると、遠くの方で何かの物音が聞こえてきた。


(なっなっ・・・何よこの音は・・?!もしや・・・モンスター!?)


ドクドクと物凄い速さで鳴る心臓を両手でしっかり押さえ、無意識に息を殺す。

―此処でじっとして、音源は何なのかつきとめずにこのまま一生暮らすなんて
あたしにはできない・・・!好奇心に失礼だわ!!

最後にしっかり深呼吸をして、覚悟を決める。


(暗さなんて関係ないわ・・!相手にとって油断なし!いざ尋常に勝負ー!!)


と、心の中で叫びながら音源の方へと猛ダッシュしていく。
何故だか知らないが、音源はモンスターだと決め付けているようだった。


ドンッ


何かに当たったようだ、もしや・・・モンスター?
そんな考えが脳裏を過ぎる。背を伝う冷や汗。
非常に動きにくい雰囲気が漂っている。が、動揺していて働かない脳と
どうしようかと相談をしていると、自分の手に何かが触れた。


「うぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

「うわあぁあぁぁぁぁ!?」


は動揺しているあまり、その触れたものが人の手だということに気がつかなかった。
そのため、世界に響き渡るような絶叫を発した。
の手に触れた張本人は、鼓膜に大ダメージが行った+沈黙の中、突然の悲鳴に
思わずつられて、悲鳴を上げた。


「・・・?」
「・・・そうだよ、


冷静になったが、静かに尋ねる。そこへが、ため息混じりに答える。
すると、一瞬の沈黙の後、が盛大なため息をついて
驚かせないでよ!と怒鳴り散らしてきた。
勝手に驚いたのはそっちだろう?と静かに反論するのは、やはりだ。


「ところで、さっき何かを漁る音が聞こえたんだけど・・・何してたの?」


序でに漁ったもの渡しなさいよ。と強要する


「・・・漁ったというか、宝箱を開けただけだけど?」
「えっ!?宝!?で、何がはいってたのよ!もったいぶらないで早く!」


にはきっと、 宝=金銀 という等式ができちゃっているのだろう。
内心ため息つきつつも、宝箱から出てきた産物をみせる。


「・・・よくはみえないけど、輝いてはいないわね。それに、ツルツルもしてないわ。
 寧ろザラザラしてる・・・。」
、因みに宝箱からでてきたものはやくそうだからね」
「なっ、もっと早くいってよ!金とか銀とか、小判とかかと思ったじゃない!!」


全く、考えていることが読めるとはこのことだな・・・。
実妹に向かって盛大なため息をつき、やくそうを放り投げてやる。
因みには、視力がいい。
ので、投げられたやくそうをすばやくキャッチすることが出来た。
暗闇にも、目が慣れたらしい。うっすらと見わたせるようになった洞窟を、改めてみる。


――いったい父は何をしているのだろうか?船に乗ってまで、いくところって・・・?


そこまで考えて、思考はストップした。
が、早く行くわよ。と諭しながら背中を叩くため、せっかく集中していた意識が
いともかんたんに四方八方に散っていってしまった。
まあ、いいか。と、別に怒るわけでもなく、諭されるがままに歩いた。



暫く歩き続ける。
一向として父は見つからず、最初は梃子摺っていたモンスターにもらくらく勝てるようになってきた。
と、同時にリオとリュカの方向音痴説が浮上しつつあった。(ほかに誰もいないが)
そんな時、が人が倒れているのを発見した。
いち早く駆けつけ、生死を確認したのもやはり

は、人助けとなるいつも以上に積極的になるんだっけ。

今更思っただった。


「大丈夫ですか!?おじさん!!」
「岩がのっかってるあたり、大丈夫じゃないと思うけど」
「岩!?気づかなかったわ」


は実は天然だったっけ。

今更思っただった。


「うんしょ・・・うんしょ・・・って!あんた、見てるだけ!?」
なら出来る」


結構インドア入ってるは、の頑張りを見ているだけだった。
趣味は読書、特技はパズル、なんて設定だったら笑えるな。
なんて、自分のことにも関わらず思ったりもした。


「おじさん!大丈夫?!」
「・・・ふわぁ〜よく寝た。・・・おや?パパスの子供じゃないか?こんなところまで
 2人だけ出来たのか?いや、ちょうどいい。この岩をどかしてくれんか?」
「はい、・・・、手伝って」
「・・・はいはい」


で岩をどかし、おじさんを救出する。
このおじさん死んでるのかな?なんて思っていたとしては、少し驚きだった。


「おじさんもしかして、薬師の人?」


そういえば、と思い聞いてみると薬師らしき人はいかにも。という感じに
頷き、服についたほこりを払いながらいう。


「そうだけどなぁ・・・もしかして、誰かまってるのかね?」
「えぇまぁ。ダンカンさんのおかみさんが待ってますよ?」


リュカがそれをいうと、薬師はしまったという顔で急いでその場を後にした。
最後に振り向き、小さく礼を言うとその場にはのみとなってしまった。
その場に押し留まっていても意味はないので、とりあえず帰ることにする。
当初の目的、パパスを見つける。という目的をすっかり忘れていたが。