それは探究心




どうやらたちのお陰で無事薬は出来たらしい。
それを誇りに思いながら、その日は眠りについたのだが次の日思わぬチャンスがめぐってきた。
ビアンカとダンカン夫人は、薬が出来たのでアルカパへ帰るという。
そこは普通なのだが、なんと、パパスが女2人だけの道中は危険だということで
自分が護衛を勤めるとダンカン夫人にいっていた。


何故チャンスなのかといえば、もっと冒険がしたいからだった。
昨日の一件で冒険に目覚め、早く新しい土地に行きたい。と願っていた。
なので当然、その話を聞いたは、首を激しく上下に揺らし
護衛を勤めることにした。


出発地、サンタローズからアルカパまでの道中の、ちょうど真ん中あたりで
モンスターに出くわした。スライムにおばけキノコ。
すかさず戦闘体制に入り、が拳を強く握る。
サンタローズの洞窟で、散々迷ったのでレベルも上の方だ。絶対勝てる。
と思い、不敵の笑みを浮かべる。


「いざとなれば、あたしのホイミがあるから大丈夫よ!どーんときなさい!!」


パパスにいわれたことがよほど嬉しかったのだろうか?
は妙に回復魔法に自信を持ったらしく、1人モンスターに突っ込んでいく。


!大丈夫か!?」
「任せて!あたしをなめんじゃないわよぉおお!!」


怒号にも似た声をあげて、は突っ込んでいった。
の気迫に、既にお手上げ状態のモンスターはその場で固まる。
の声はおたけびにもなるのだろうか?
の後姿を見守りながらそんなことを考えていた。


「楽勝ね。モンスター固まってたし」
「・・・・・」


はノーコメントだった。
先ほど思っていたことを口にすれば、間違えなく無傷じゃすまない。
だからといって褒めると逆に"ワザとらしく褒めるんじゃないわよ!"とか怒鳴られそうなんで
何もいってもダメだと思い、やはりノーコメント。


、いいおたけびだった。ナイスおたけび!」
「父さん、あたしはおたけびなんてあげてないわ」









「ついたっ」


が嬉しそうに町へと入る。
それに続いて、ビアンカ、ダンカン夫人、パパスの順で町へと入っていた。
なんだかんだいって双子は仲がいいので、ビアンカの家―――アルカパの宿屋まで
二人は肩を並べて町を見物していた。


無事に役目を終え、ダンカンに薬草を渡したのをみて
パパスたちは、サンタローズに帰ろうとしたのだが(勿論、は不服。)
ダンカン夫人の"今晩だけでも泊まってちょうだい"という熱い要望から、パパスは断れず
一晩だけ泊めてもらうことにした。
は内心、ガッツポーズを決めていた。



――ナイスガッツ!ビアンカのお母さん!!




というわけで、双子はビアンカに町を案内してもらうことになった。
ビアンカの説明を聞きながら、町を歩いていると池にかかった橋にたどり着く。
すると、なにやら猫のような、モンスターのような。それ系列な泣き声が聞こえてくる。
どうやら、少年2人につつかれたりして虐められているらしい。
それを見た瞬間、とビアンカが駆け出した。

――どっちも正義感が強いんだよね・・・。

かもゆっくりとそちらへ歩いていった。


どうみても猫には見えない。それがの虐め現場を見ての率直な感想だった。
豹柄で尻尾の先端はふさふさしている。何かといえば、虎だ。
ま、どっちでもいいけど・・。と考えることを放棄し、少年2人を見る。


「ちょっとっあんたたち!!何してんのよ」


ビアンカが怒鳴る。少年達はビクリともせずに楽しげに笑いながら
いまだその動物を虐め続けている。
それに苛ついたが、無表情で尋ねる。


「あんたら泣かされたい?あたしは泣いて謝るまで許さないわよ??」


脅しのかかったの言葉に、顔を引き攣らせる少年達。
は少年達に同情して、少年達に"の言葉は気にしないで"
といってやった。


「虐めるなんて・・・虐めるくらいなら僕らに頂戴よ」


ちょうど、ペットがほしいと思っていた。
などと悠長に付け足す兄に、妹は盛大なため息をつく。


「これはモンスターよ?なんでモンスターをペットにするのよ。どうせなら
 "仲間にしたいと思っていた"にしなさいよ」


いわれてみれば、モンスターかもしれない・・・。
は適当に相槌を打ちつつ、ビアンカを見る。
ビアンカは怒りにワナワナと震え上がり、今にも少年達を殴り倒しそうだ。
それに気づいた少年達が、おどおどと言う。


「レッ、レヌール城のおばけをたっ、倒してきたら・・・こいつあげてもいっ・・・いいぜ・・・」


どもりながらいうなよ・・・とツッコミながら、冷静に悩む。


――果たして・・・本当にこの世に幽霊なんているのだろうか?僕は見たことがない。


「ねえ、・・・」


も深刻気に悩んでいる。同じことを考えているのだろうか?
は、同じ疑問を持つものに出逢えて少しだけ嬉しかったのだが・・・


「あたし、"そっち系の話"苦手なのよ・・・力ずくで奪っちゃダメかしら?」


なんてが言った瞬間、少年がその場から消えた。
消えて直ぐに扉が閉まる音と、鍵がかかる音が聞こえたので逃げたのだと悟った。


「・・・逃げられたわ」


ふぅとため息をつき、ビアンカと顔を合わせる。
ビアンカの顔は、輝きに満ちている。目を合わせると・・・まっ、眩しい
輝く瞳に、やや押されながらが尋ねる。


「ビアンカ姉さん・・・もしかして・・・」
「行く気満々よ!!さぁ、今夜にでも行きましょう!!!」
「でも、次の日にはあたしたち帰るのよ・・・?」
「心配ナシよ!!さぁ、いきましょう!」


もう、何を言っても無駄だな。と悟ったは、それ以上言葉を言わず
黙ってビアンカに従うことにした。
ある意味最強ビアンカに、は純粋に憧れた。