それは冒険




夜中のアルカパの宿屋をひっそりと歩く少女、ビアンカの顔には
うっすらと怪しい笑みが浮かんでいる。
懐中電灯を下からつけたら、お化け屋敷でも通用するような顔だ。
忍び足で向かうは、たちが泊まっている部屋。

ドアに手をかける・・・ギィ・・・っと無人の洋館の馬鹿でかい扉を開けるような音がする。
カーテンを閉め切っていて、月明かりすら入ってこない。
ビアンカは手探りならぬ足探りでのベットを探す。


「・・・ビアンカ?」
「あ、起きたの?」


いつからおきていたのか、が眠たそうな声色で尋ねてくる。
それに、ビアンカはいつもどおり何処かのんびりとした口調で答えた。
チラリとのベットの隣を窺うと、もう1つベットがあった。
自分の記憶が正しければ、そこにはパパスはいなかったはずだ。
――と、なると


ビアンカは布団にもぐりこみ、暫く経って勢いよく抱きつく。


「きゃー!きゃー!夜這い!?夜這いなのねええ!?!?」


の素っ頓狂な声が、静かな宿屋に響き渡る。
しかも、かなり間違えた発言が、だ。
がベットから飛びのくと、はビアンカを強引に引き剥がした。
泊まっている人が、誤解して此処にこなければいいけど・・・と心配したのはだけで
ビアンカは別に慌てている様子はなかった。


「・・・・あら、もしかしてビアンカ姉さん・・・?」
「そうよ〜何が夜這いよ」
「夜這いか、のセクハラかと思ったのよ」


誰がセクハラなんて・・・
なんて小さな呟きは、ゲラゲラと笑っている女子2人の笑い声にかき消された。
同室で寝ているパパスは、依然起きる様子はない。
がどんな轟音で起きないのは、アンタ譲りじゃないか。
なんて思い始めただった。


「さて・・・レヌール城いくのよね・・・」


一応寝起きなので、声に高揚が感じられなかった。

















「いたっ!痛いわよ!!」


夜の草原に少女特有の甲高い声が響き渡る。
と、同時に鈍い音が聞こえる。


「・・・惨い」
!これは正当防衛よ!!」


無残・・・いや、儚く散ったモンスターを見てが一言。
その一言に、酷く憤慨したの声は、寝起きのものとは明らかに違っていた。
寧ろ、大分経っているように思える。


まぁ、3人は迷子真っ只中というわけだ。


「もぉー!がこっちのほうがいいとかいうからこっちきてやったのに!
 まんまと迷子じゃない!どうしてくれんのよ!!」


いや、こっちへいこうといったのはだ。
と反論する間も無く、矢継ぎ早に罵言が飛んでくる。
はちょっとぐらい反論しよう、と思い口を開くが、ビアンカの発言によって
それを遮られる。


「・・・もしかしたら、あそこじゃない?」


そういってビアンカは、月明かりに照らされて不気味に反射している
洋館のような・・・城を指差した。
いかにも、お化け屋敷として使えそうなそこは、幽霊でもいそうな雰囲気だ・・・。


「・・・いやぁ・・・おばけきらい・・・」


の小さい呟きは、夜風に消えた。